#1 ゴロ美の婚活①ハプニング編
一度結婚しておいたほうがいいかも?
地方から上京して起業したころ、気づけば30代半ばになっていたゴロ美は、あまり結婚や子供が欲しいといった願望はありませんでしたが、
「一度くらい結婚しておいた方がいいのでは?」
というものすご~くフワッとした理由でほんのり出会いを求め始めます。
仕事では、男性との関わりが一切ない女性専用の美容サロンだったので出会いはゼロ。
職場以外の人間関係も、地元の友人はいましたが皆既婚者になっていました。なので自分で出会いを探さなければなりません。
婚活らしきものを開始
マッチングアプリもまだほとんど無かった頃に、どうしたら男性と出会えるか?と考えたゴロ美は、とりあえず大手のパートナーを探せるサイトにおそるおそる登録してみました。

顔はほとんど隠していたのですが、新規に登録すると一気に50件ほどのはじめましてメールが男性陣から届きました。女性が登録した時はだいたいそういうもんらしいです。
年齢や見た目などで、「この人なら返信してもいいかな」という人に返事をしていきましたが「すぐに会いたい!(要はヤリたい)」みたいな人が多く、ゴロ美はドン引きしました。
こっちは真面目な出会いを求めてるんじゃい!とそういう人への返信はやめ、落ち着いてやり取りができる人とだけラリーを繰り返し、ついに一人の男性と実際に会うことになりました。

赤坂あたりの駅の改札で待ち合わせをしてドキドキしながら待っていると、プロフィール写真で見ていた通りのウッチャン似の笑顔の優しい男性が現れました。
メールではとても感じが良く、実際に会っても優しそうな人だったので一安心し、ビアバーで飲むことになりました。
が、これが良くなかった。
そこではビールを5杯くらい飲んだと思います。

思いのほか会話が弾み、気づけば終電を過ぎてしまっていました。そのお店はウッチャンが会計してくれ、店を後にしました。
もちろんタクシーで帰るつもりでいたゴロ美は歩きながら空車を探そうとしましたが、その時事件が起こります。
ウッチャンが豹変
店を出たとたん、今まで優しかったウッチャンが突然私の腕をつかみ、すごい力で引っ張りはじめたのです。あの辺にラブホがあるのかどうかは知りませんが、とにかくある方向へ強引に連れて行こうとします。
ありえない!と全力で抵抗するゴロ美。しかしこんな時に限って年末が近かったこともあり、全然タクシーが通りません。
ウッチャン、いやウッチャンに失礼なのでもう”ウ”と呼ぶことにします、ウは酔った勢いなのか、全然諦めずゴロ美を引きずって行こうとします。
しかしゴロ美は割と酒が強かったので、ビール5杯だけではちょっと血行良くなったかなくらいのほぼ素面状態。
逆にウを引きずり倒す勢いで空車を探します。
ゴロ美、否、もはや力自慢の"ゴリ美"です。
幸いウはゴリ美とそこまで体格差がありませんでした。
普段デスクワークの華奢な男 VS 毎日力仕事で腕力の強いメスゴリラの対決!
深夜の東京に熱い戦いのゴングが鳴り響きます。

お互い引っ張りあった状態のまま、100mほどバトルしつつ移動したところでようやく空車のタクシーを見つけました。
ウを振り払ってタクシーに乗ろうとするも、今度は「(ホテル)行かないならさっき奢った金払えよ!!」とほざいたので、6千円程度の会計だったのですがムカついたゴリ美は万札を財布から取り出して投げつけ、「オラ拾えよ!!」と吐き捨ててタクシーに乗り込みました。(金はちゃんと拾ってた)
そうしてもなおウはドアを押さえつけてゴリ美を罵りながら発車を妨げようとしたので、「もう運転手さん出してください!!」と頼んで車を出してもらいました。
帰路でまさかの珍事
ウからやっと解放され、「お客さん大丈夫?」と運転手さんが気遣ってくれて少し落ち着いたゴリ美、いやゴロ美でしたがまだ怒りは収まりません。
イライラしながら深夜の六本木通りを走っていると、クリスマスは過ぎていましたがサンタ帽をかぶりガードレールに寄り掛かって電話している女の子が目に入りました。

彼氏とでも電話してるのかな?と何気なく見ていると、ちょうど車が信号待ちで止まった時にいきなりその女の子が車道に飛び出してきて、ゴロ美の乗ったタクシーの真横あたりにペタン!と座り込んだのです。よく見ると女の子は泣いていました。
えぇ!?とビックリして窓を開け、「お姉さん!危ないよ!戻って!」と声を掛けるも全く耳に入っている様子はなく、泣きながら
「来てくれないならここで死ぬからーーーー!!」

とスマホに向かって叫んでいます。
運転手さんとどうしよう、危ないですよねとオロオロしていたのですが降りるわけにもいかず、そのうち信号が青になり車は発車してしまいました。
後ろの窓からずっと見ていたのですが、後続車が来ても彼女は全く動こうとしません。
車道に座り込んだ女性に気づいた車が皆車線変更していき、姿が確認できるうちはずっと彼女はそこにいました。
あの子に遭遇した車はみんなびっくりしたと思います。
そんなことがあったので、さっきまでの怒りはどこかに行ってしまい、なんだか拍子抜けしてしまいました。
ゴロ美は割とこういうハプニングに遭遇する率が高いのですが、人が大変な目に合ったあとでもっと面白いこと起きるのやめてもらっていいですか?
ねぇ神様。
次の日、ウから「昨日は酔ってしまい"t)gi#E%5t%TY」みたいな謝罪のメールが届きましたがもうどうでもよかったので返信はしませんでした。
ただ今でもちょっとお釣り返せよ!とは思ってます。笑
一発目にこんな目に合ってしまったのでゴロ美はすっかり萎えてしまい、すぐにネットでの婚活を諦めたのでした。
ワシなら間違いなく金属バットでしばき倒すわ。まぁ何事もなくて何よりや。授業料と思って諦めぇ。